サンデン・リテールシステム株式会社 様
複数のAWSアカウント乱立に伴い接続点を再整理
オンプレミス環境からの移行と合わせマルチクラウド運用を支援
Topics
導入前の課題
IaaS基盤導入の決め手
移行期限が迫る中、オンプレミス環境からのスムーズなクラウド移行を実現
VMware環境のクラウド化の方針と、選択の決め手について教えてください。
志塚氏
移行期限まで時間も限られていたため、構成を大きく見直す余裕がなく、現行環境を活かしたスムーズな移行が必要でした。そのためオンプレミスのVMware環境からスムーズに移行できるIaaS(Infrastructure as a Service)基盤を探しました。そこでIIJが提供するIaaSの「IIJ GIOインフラストラクチャーP2(以下、IIJ GIO)」を見つけました。話を聞くとVMware環境同士でオンプレミスからクラウドへの移行が可能なサービスであり、構成を変えずに短期間での移行が可能だということで、導入を決定しました。
IIJ GIOへの移行はスムーズでしたか。
志塚氏
移行はコロナ禍の中の2021年の作業でしたが、実際にIIJは期限までの移行に対応してくれました。IIJにはその後もサーバ系の運用を委託し、基幹システムの9割方がIIJ GIOに移行できました。
また独立後のネットワークは、大手通信キャリアのIP-VPNサービスを利用したWANを構築していましたが、冗長性などの問題からIIJにネットワークも含めて一括して依頼することにしました。IIJ GIOへの移行を通し、IIJの迅速で親身な対応を実感していたほか、更に性能やコストに対する適切な提案があったことが選定の決め手でした。
マルチクラウド化の課題
複雑化したAWSへの接続環境を整理
ネットワークのリプレース後の状況について教えてください。
サンデン・リテールシステム 阿久津貴文氏
WANをキャリア回線からIIJのSD-WANサービスに移行し、ネットワークを「IIJプライベートバックボーンサービス(プライベートバックボーン)」に集約してIIJ GIOと相互接続する環境を構築しました。
IT本部 情報システム部
阿久津 貴文氏
志塚氏
一方、サンデン時代にRSクラウドで利用を始めたAWSも、様々な業務システムで利用が進んでいました。会計システムのほか、物流ハンディ管理、その他部門ごとの利用などです。こちらは必要に応じてAWSの利用が拡大していったことから、AWSの提供元が複数ベンダーに分かれているような状況になっていました。
ネットワーク更新に伴うAWSへの接続形態の変更はありましたか。
志塚氏
AWSは従来、旧ネットワークを提供していたキャリア網からDirect Connectによる閉域回線により接続していました。セキュリティ対策と通信品質の確保の両面から、Direct Connectが不可欠だったためです。ネットワークのリプレースで、IIJプライベートバックボーンサービスからDirect ConnectでAWSに接続する形態に移行する必要が出てきました。
IIJからはどのような提案がありましたか。
志塚氏
これまでDirect ConnectのAWS側の収容先としては、会計システムを実装しているAWSのアカウントを採用していました。会計システムのアカウントから他のシステムや更に異なる事業者が提供するAWSにつなぐ形態でした。ただDirect ConnectについてIIJに調査してもらったところ、構成の複雑さからリスクがあるということでした。IIJからは、新しくDirect Connectを収容するAWSアカウントを用意し、このアカウントをハブにする接続形態の提案がありました。構成をシンプルにしてリスクに備えられる提案でしたので、採用しました。AWS接続の切り替えは2025年3月に完了しました。
導入後の効果
運用監視も委託しマルチクラウド構成における統合運用管理を実現
IIJを介したマルチクラウド構成を採用したメリットは、どのような点でしょうか。
阿久津氏
9割のサーバがIIJ GIOにあり、AWSへの接続もIIJのネットワークからDirect Connectで実現する形態に整理できました。サーバ系だけでなくネットワークも含めて、マネージドサービスとして全体を管理してもらえるようになった効果を感じています。運用の現場としては考慮することが減り、業務がかなり楽になったと思います。
志塚氏
実際、マルチクラウド体制を取りながら、IIJ GIOだけでなくAWSもIIJが監視していて、アラートを上げたり調査したりしてもらっています。IIJに一元管理してもらうことで、私たちの情報システム部の業務リソースを使うことなく、安定した運用を実現できています。IIJはマネージドサービス、サポート体制共に強固なものがあると感じています。
今後についてお考えを聞かせてください。
阿久津氏
今後は、運用管理業務を更にクラウドベースのマネージドサービスに振り分けて、情報システム部の業務を軽減していきます。本当に実現したい改革に力を注いでいけるような環境の構築が進んでいると感じています。
大木氏
AWS上で稼働しているRSクラウドは、コロナ禍による食品流通のビジネスモデルの変化によって、IoTのデータを多く収集できるようになりました。クラウドを使ってデータを提供することが価値になる世の中に向けて、今後も基盤としての業務システムをIIJ GIOで安定して運用しながら、AWSで新しいビジネスモデルにも対応していくつもりです。攻めの一手として今後の事業を成長させるために、IIJとはいい関係を続けていきたいですね。
導入したサービス・ソリューション
お客様プロフィール
サンデン・リテールシステム株式会社
東京本社:東京都墨田区錦糸1-2-4アルカウェスト8F
設立:2019年7月29日
資本金:1億円
売上高:760億円(2024年度:連結)
従業員:約1,530人(2024年度:連結)
※ 本記事は2025年5月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。
導入事例
導入したサービス・ソリューション
- IIJ GIOインフラストラクチャーP2
- IIJクラウドエクスチェンジサービス for AWS
- IIJクラウドインテグレーションソリューション for AWS
- IIJ統合運用管理サービス(UOM)

分離・独立により自社ITシステムの整備が不可欠に
貴社はクラウドをいつから活用されているのでしょうか。
サンデン・リテールシステム 大木哲秀氏
サンデン・リテールシステムは、自動販売機や飲食店、コンビニエンスストアなどに向けた什器など、冷蔵・冷凍に関連する製品のメーカーです。従来はハードウェアとしての機材をユーザに提供していましたが、ハードウェアの付加価値が下がる中で、サービスを活用したビジネスへのシフトを模索していました。元親会社であるサンデン傘下の事業部門だった2017年に、自動販売機や什器などからデータを集めるIoTの仕組みとして、「RSクラウドサービス」をつくりました。このときは、サンデンが保有していたAWS環境の上にサービスを実装しました。ただしRSクラウドを整えたものの、当時は扱えるデータがあまりない状況でした。
常務執行役員 CTO&CIO
R&D本部・IT本部
本部長
大木 哲秀氏
その後、体制に大きな変化があったと聞きました。
大木氏
流通システム事業部門が、2019年にサンデン傘下からサンデン・リテールシステムとして独立することになったのです。これにより、サンデンのオンプレミスサーバ上にあった業務システムを、自前の環境に移行する必要が出てきました。基幹システムもサンデンからレンタルしているような状況で、早期に自社のサーバやネットワークを整備する必要があったのです。
サーバの移行はどう進めましたか。
サンデン・リテールシステム 志塚俊樹氏
オンプレミスの時代の業務システムは、VMwareの仮想環境上に構築していました。これを自社環境に移設する必要がありました。コロナ禍の2020年ごろから具体的な検討を進めました。
IT本部 情報システム部
志塚 俊樹氏