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IIJ.news Vol.189 August 2025
ここでは「GIGAスクール構想」のもと、
石垣市教育委員会が取り組んだ小中学校24拠点・28校の
通信ネットワーク整備について紹介する。
文部科学省が主導する「GIGAスクール構想」では、高速・大容量の通信ネットワークを整備し、全国の小中学校の児童・生徒に1人1台ずつPCもしくはタブレット端末を配布しました。
児童生徒約5000名、教職員600名が在籍する沖縄県石垣市の小中学校では(GIGAスクール構想が始まる以前の)2014年にインターネット通信環境をひと通り用意しましたが、通信品質には多くの課題がありました。障害の原因を迅速に特定する仕組みがなく、風雨や塩害などによるトラブルも頻発していました。各校に安定性が高い専用線を導入する案も出ましたが、地形的制約やコスト面から実現には至りませんでした。
石垣市教育委員会では、2020年度に複数の企業に情報提供を依頼し、どのような構成が適しているのかを精査したうえで、2021年2月に「石垣市教育ICT環境整備指針」を策定しました。その際、ICTの知識があまりない担当者が着任した際にもシステムの管理・運用の負担を軽減できるようにすることや、台風・落雷・塩害など自然現象による機器の劣化を避ける意味からも、クラウド型サービスである「IIJ Omnibus サービス」(以下、IIJ Omnibus)を導入することとし、2021年3月に要件を決定。同年8月に中学校において試験的に回線を開通させ、1校あたりの通信量やネットワーク負荷などを検証して問題点の洗い出しを行ない、同年11月に約400台のネットワーク機器を含む新環境の導入を完了しました。
各校ではフレッツのベストエフォート回線を介してIIJ Omnibusのネットワークに接続していますが、従来のPPPoE接続から、安定性が高いIPoE接続へ変更することで、ボトルネックを解消。クラウド型のサービスを利用して、管理画面から障害発生状況、帯域利用状況、端末の接続状況などを一元的に把握できるようになったため、管理のしやすさが飛躍的に向上しました。また、IIJ Omnibusからインターネットに接続する1Gbpsの帯域保証回線を確保したことで、導入後も各学校からユーザビリティに関する大きな不満は出ておらず、ストレスを感じることなく利用できています。旧ネットワークではメールを開く際、30分も待つ(!)といったことが起こっていましたが、今はやりたいことがやりたい時にできるようになりました。
ネットワークと端末が整えば、子どもたちは自分の興味に即した学びが可能となり、膨大な情報を整理・活用する力を実践的に養うことができます。これは、情報格差が生じやすい離島の子どもにとって大きなアドバンテージであり、加えて、ICTツールを活用して、他者の意見を取り入れながら自分の考えを深めていく「協働的な学び」も促進されています。
当初はICTの本格導入に不安を抱く教員もいましたが、子どもたちが積極的に端末を使いこなす姿やICT支援員の丁寧なサポートによって、その不安も次第に解消されていきました。現在では、教員も児童・生徒も自信を持ってICTを活用し、さまざまな分野で利用が広がっています。
今後は、GIGAスクール構想に続く次世代構想「NEXT GIGA」も視野に入れたネットワーク環境の強化に取り組んでいく予定です。
インタビュー記事・動画では石垣市教育委員会と真喜良(まきら)小学校のみなさんの取り組みを紹介しています。
本記事は、2022年の取材内容と導入事例を再編集しています。記事内のデータや組織名などは取材時のものです。
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