データセンターは、IT機器を安定的に運用できる環境を提供する施設として1990年代頃から存在しており、その重要性は年々増しています。個人の生活のなかでは、スマートフォンが普及し、音楽、動画、漫画配信などのエンターテイメントから銀行の決済まで、ありとあらゆるサービスがインターネット経由で広く利用されるようになり、それを実現するシステムは、データセンターにあります。ビジネスにおいても企業の情報システムはかつて自社のサーバ室(オンプレ)にあったものが、クラウドを利用するのが当たり前になりつつあり、そのクラウドサービスを支えるIT基盤もデータセンターにあります。そしてデータセンターを取り巻く環境は大きく変わりつつあり、今、4つのトレンドの中にいます。
トレンド1 ハイパースケールシフト
急速に普及するクラウドサービスを支えているのは、従来型のデータセンターではなく、大量のIT機器を効率よく収容できるハイパースケールデータセンターです。受電容量が一般家庭の1万軒分以上に相当する数十MW(メガワット)と規模が大きい一方で、高い省エネ性能を備えることで、環境への負荷を抑えながら効率よく運用しています。
トレンド2 エッジコンピューティング市場の創出
1980年代の「メインフレーム」(集中)がパソコン(分散)に置き換わり、2000年代以降は分散していたサーバがクラウドへと集中するようになっていることから、コンピューティングシステムは集中と分散を繰り返すという説があります。クラウドとハイパースケールが「集中」ならば、ネットワークの末端(エッジ)で処理を行うエッジコンピューティングは「分散」です。IoT、AI、5Gの普及により、利用者や端末でデータの蓄積や処理を行うエッジコンピューティングが、医療、エンターテイメント、物流、製造、農業など幅広い業界で広がっています。
トレンド3 カーボンニュートラル
エネルギーを効率良く使う省エネ化(省エネルギー化)と、CO2を排出しない電力を使う再エネ化(再生エネルギー化)の2つを進めることにより、データセンターのCO2排出を実質的にゼロに近づける「カーボンニュートラル」が実現されていきます。令和4年に省エネ法が改正されデータセンター業にPUE1.4以下を目指すべき水準としてベンチマーク制度が導入されたことや、東証プライム上場企業にTCFD(※1)提言に基づく気候変動リスクの情報開示が実質的に義務化されたこともあり、データセンターのカーボンニュートラル化は喫緊の課題となっています。
※1:TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)とは、G20の要請を受け、気候関連の情報開示及び金融機関の対応をどのように行うかを検討するため、金融安定理事会(FSB)により設立された気候関連財務情報開示タスクフォースのこと
トレンド4 運用自動化
ハイパースケール化によってデータセンターの規模が拡大し、エッジコンピューティングで運用対象のデータセンターの数も増え、省エネ/再エネ化で発電/蓄電設備や再エネ価値(非化石証書等)管理などの業務領域も拡大するなか、限られた運用リソースで、データセンターを高い品質で運用していくためには、運用の自動化が必須です。
AIによる障害予兆検知や空調制御、入退館の無人化など自動化の対象となる運用業務は多岐にわたります。
